(for English, see http://livingpermaculture.blogspot.com/2011/03/city-repair-and-education-for.html)
僕が大学卒業してすぐに関わっていた持続可能な生活の教育学(ESLP)に付いて紹介致します。とても革新的な授業で色んな面で実験的な教育プログラムでした。このプログラムに二年間全力を尽くして、毎日口から出る話がESLPばかりとなっていた頃です。ESLPの事しか考えていないと相棒にしかられ、ESLPが愛人と化してしまったと訴えられていました。
確かに頭の中はESLPでいっぱいでした。
週7日朝から晩までより素敵な教育プログラムを育もうとし夢中になっていた事により、相棒との時間がほとんどなくなってしまい活動仲間ともぴりぴりした状況に陥ってしまいました。恐るべし【忙しさ】。
持続可能な生活について教えたり活動していたはずが、自分では実践していない事に気付かざるを得ない状態となり、相棒共々仕事をやめて中米でジャングル生活をする事にしました。極端かもしれませんが、【忙しさ】が普通であったり美徳でもある文化からいったん抜け出さないと、持続可能な生活の本当の意味が分からないだろうと思ったのです。
そんな事もありましたが、ESLPは今まで体験してきた大学の教育プログラムとしては最も新鮮で希望、エネルギー、実行力を与えてくれるものでした。
学生が学生の為に自分達で責任を取って作り出す創作教育。
世界で活躍している活動家と学生が主人公の教育プログラムです。
今でも新しい世代の学生が頑張って続けているそうです。それこそが新しいアカデミアのあり方なのでは無いでしょうか?これからも教育/ペダゴジーについて様々な人ともっと深く考えていきたいと思います。
以下は、当時苦しみながらもサポートしてくれた相棒が書いてくれた物です。
「下記はサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)出版の雑誌「サステナ」第1号に掲載して頂いた投稿文です。
*サステイナビリティ(持続可能性)に関する情報満載の「サステナ」は、年4回全国で無料配布されています。
※サステイナビリティ学連携研究機構はグローバル・サステイナビリティ実現を目的としたネットワーク型研究拠点で、東大、京都大、阪大、北海道大、茨城大の5大学が研究拠点となり、東洋大、東北大、千葉大、国立環境研究所の4機関が個別課題を担う形になっています。
詳しくは→ http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sustaina
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「持続可能な生活の教育学」@カリフォルニア大学
学生から始まった活動・・・・・・・・−→
私が暮らすカリフォルニア州北部の町でも、反戦や環境保全運動、パーマカルチャー、ファーマーズマーケット、ホームレス対策などサステイナブルな社会へ 向けてのさまざまな試みが花開いています。そのなかで、カリフォルニア州の大学で近年発展したサステイナビリティ教育を紹介させていただきます。
数年前、学生たちによる校内環境運動のもと芽吹いたキャンペーンのひとつに「サステイナビリティをアカデミアに進出させよう」というものがありました。そ の結果、それまで草の根色が濃かったサステイナビリティ運動は大学本部へと提起され、熱心な学生の働きが認められて、2003年に「持続可能な生活の教育学」(Education for Sustainable Living Program、ESLP)というカリキュラムが正式に設けられるようになったのです。ほんの数人の学生が立ち上げたプログラムが、今や受講希望生徒数が200人を超える大学もあるまでになりました。
現在、このプログラムを実施しているのは、カリフォルニア州立大学のうちでは、サンタクルース校、サンタバーバラ校、バークレー校、サンディエゴ校、デイ ヴィス校、ロサンゼルス校で、徐々に他校にも導入される傾向があり、サンタモニカ市立大学など他の地域の教育機関にも少しずつ広まっています。2005年 にはoikos賞を受賞し、国際的にもこれからの成長が期待されています(oikosは、持続可能な発展に関連する教育(とくに高等教育)を推進する組織 で、賞金など、さまざまな形で世界中の学生活動を支えています)。
私は友人に勧められて2年前にESLPを受講しました。丁度、政治への関心や環境問題への意識が芽生え、学生運動と地域での活動に力を入れ始めていた頃で した。この駆け出しの時期に、サステイナビリティを知ったのは幸運だったと思います。以後、活動をするにあたって持続可能性を考えない事はありませんし、 私生活においても非常にプラクティカルな概念なのだと学びました。ESLPへの個人的な関与は、ほんの少しお手伝いをさせて頂いたに過ぎない程度なのです が、同居人が活発にプログラム主催に携わっているので(それ故ESLPに従事している他の方々とも仲良くさせていただいているものですから)元受講生とい う立場からの視点を超えた紹介になればいいなと思います。
学生が主体の活動・・・・・・・・−→
私が興味をひかれるESLPの特色は以下のようなものです。
①カリキュラム自体が現役生徒と卒業生らによっ て企画、(指導も含めて)実施されているという点。スポンサーやアドバイザーという形で教授や助教授らも多数携わるものの、受講している生徒への指導、そ の指導にあたる学生のトレーニング、教科書およびシラバス作成、またプログラムの管理はすべて学生と卒業生が行っています。特に企画を務める現役学生や社 会人らは週末も休めないなど過酷なスケジュールを覚悟しなければなりませんが、将来社会活動等に貢献する意欲のある若者には極めて有益な経験になります。
受講する学生と同世代の若者が企画・編成を行うことで、カリキュラムの性格が生徒好みのものになる、というのも利点といえましょう。単位は稼げるものの 必須科目でないクラスをより多くの学生に受講してもらいたいのであれば、それなりに若者がひきつけられるものでなければならないと思うからです。
②筆記試験が行われない点。いったい何を基準に 成績がつけられるのかというと、学生には、習得した知識を実践で表現することが求められるのです。まず一番身近な大学という環境をサステイナブルな施設に 変えてゆくのがESLPの目的であるため、「校内に有形の変化をもたらすこと」が期末課題となります。学生は学校や地域と協力し合いながら、自らが学んだ 社会・環境問題の解決に行動をもって挑みます。ESLPをきっかけに改善された例として、校内に設けられている食堂やカフェが使用する食品の約2割は有機 のものが仕入れられるようになったというものがあります(アメリカの大学生は2年程は学校の寮で暮らし、3食とも食堂で済ませることが多い)。
講義と実践・・・・・・・・−→
各校それぞれのカラーに合わせてカリキュラムの詳細は異なりますが、プログラムの構成は共通しており、ゲストスピーカーによる講義と、Action Research Team(ART、「実践型研究チーム」とでも訳せようか)と称される小クラスの2部から成ります。
講義は週1回2時間ほどで、プログラムに受講していない学生や地域の人々にも開放されています。ゲストスピーカーは環境保護主義者や活動家に限らず、思 想家や芸術家、中南米のコーヒー農村で働いた経験のある学生、菌類学者、アメリカ先住民の長などさまざまです。そのため、実に多様な視点から幅広くサステ イナビリティについて考える絶好の機会となります。例えば、中南米の農村で働いた学生は現地の実状をさらし、コーヒーなどの産出物の国際市場の在り方につ いて問い、菌類学者は菌群を使用してのバイオレメディエーションについて語り、アメリカ先住民の長は一度は欧米の影響を強く受けて伝統的な生活スタイルや 文化が失われかけた彼の村が、現在いかにして持続可能な社会を再建しようと試みているかについて語りました。
ARTとは少人数での集団学習を行う場で、学生たちは10前後ある研究課題のうちから自分の興味のあるものを選択します。研究課題は各校それぞれバリ エーションに富み、同じ学校でも年によって新しい課題が追加されたり、あるいは人気があれば繰り返されたりして、学生の関心がおおいに反映されています。 今まで行われたARTの研究課題には下記のようなものがあります。
【バイオ燃料】植物油やエタノールなどさまざまな燃料の良し悪しについて研究するほか、ガソリン式エンジンのバイオディーゼル変換方などのスキルを取得する。
【食組織】地域で売られている野菜や肉などの食品が、消費者の手に渡るまでにどのような過程を通ってきたのかを追いかける。畑や工場などを訪れ、実態を目の当たりにする。
【グリーン建築】グリーン建築の原理や種類などの学術的な研究や、地域にあるグリーン建築物の見学を通して知識とスキルを学ぶ。
【パーマカルチャー】校内の菜園・果樹園を使用してのパーマカルチャーの実行。菌群を絡ませての一工夫あるパーマカルチャー実地庭園を設け、維持させる。
【虐殺問題】主にダルフール(スーダン)大量虐殺について資料集めや研究をし、このようなことへの対策に取り込んでいる組織と連携を作ったり、大量虐殺 のような人為的悲劇に対する大衆の意識を高めたり募金活動をするなど、学生という立場にあってどのような解決方策が行えるか考える。
【核問題】現在、アメリカの核兵器デザイン・生産のほとんどをまかっている2カ所の原子核研究所はカリフォルニア大学によって運営されている。学生たちはこれらの研究所が環境と人々に及ぼす影響の実態を調査し、教育機関/軍/企業からなる複合体の在り方について論ずる。
実践型というくらいですから、学生はARTで学び得たスキルを披露し、あるいは、研究課題が社会・環境問題である場合には実際に問題解決に結びつく行動 を実行する形で勉強の成果を示します。例えば、バイオ燃料ARTは、校内にバイオ燃料組合を設けたり講演会を開いたりし、より多くの人がガソリンに取って 代わる燃料にアクセスできるようにしました。先ほど述べた、大学の食堂で使われる食材の約2割を有機栽培を行っている農家から取り入れるように働きかけた のは食組織ARTです。グリーン建築ARTは、大学が活用できるような本格的な建造物の構成を図りましたが、結局大学本部から許可が下りなかったために壁 だけを実演した他、実際に役に立つものとして漆喰小炉(かまど)を完成させました(付近に住む学生にしばしば使用されている)。パーマカルチャーARTで はその収穫が学生に配給されています。
虐殺問題や核問題など、有形の対策をとるのが困難な課題もあります。大の大人が寄って集って何十年もかけて問題を論議し解決案を熟考し、それでもまだ解 決されていない社会問題を、1学期間勉強しただけの学生数人が期末課題で一挙解決というのはあり得ないでしょう。このプログラムの焦点は、あくまでも大学 (そして文化を分かち合った同世代の若者)に有形の変化を与えるというものです。理論的に問題を学んだ後、その現状をどう改善すべきか考案し、(例えば チャリティコンサートを開催したり、あるいは大掛かりなイベントを催したりして、同じ学校の学生の間に問題に対する関心や理解を深める働きかけをするな ど)身近な所から改善を促す事が第一歩です。一見、効果的な対策ではないように思えても、何がどこでどのような波紋を及ぼすか分かりません。ただ論ずるば かりでなく、実際に自らの手でできる解決策を導きだすというのは今の時代に必須の能力ですから、大いに意義のある訓練だと思います。
学生が何から何までまかなっているために、このプログラムには未熟な部分もあるでしょうが、非実際的な学習から脱却して、実践的な学習によって個人の積 極的な思考力と行動力を涵養しようという試みは、順調に明るい方向へ進行しているように見えます。高等教育機関がサステイナビティを奨励するものになれば (初等、中等の時点からしっかり植え付けるに越したことは無い訳ですけれども)、次世代の若者達は持続可能性を念頭においた生活の仕方を身につけることが できるでしょう。より多くの若者がこの概念を心に留め、それの押し進める生活のノウハウを知っていれば、自然とサステイナブルな社会が建築されてゆくので はないでしょうか。カリフォルニア州立大学においてのESLPは、学生たちが自らの手で、自分たちの生活スタイルと、教育施設と、ひいては未来の社会の改 変を推進する機会を与える場となっています。」
オリジナルは相棒のブログを参照してください。
サンタクルーズのオルタナティブ文化についての面白い記事が色々載せてあります。
彼女も僕と一緒にジャングル生活をしてから、
神経内分泌(環境ホルモンの体への影響など)の研究に専念して、
現在は東大の研究生。
世の中には色んな人がいるもんですね。
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